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Niwayama Gallery 庭山ギャラリー

Artist

64  ティツアーノ/Tiziano Vecellio(1488/90-1576)

1510/15年 ヴィオランテ/Violante(ウイーン)

ティツアーノは、ヴェネチアでベリーニやジョルジョーネのもとで修行し、ヴェネチア派の代表的画家として16世紀イタリアに君臨し大きな足跡を残した。ヨーロッパ中の王侯貴族が彼の依頼者となり、大型の祭壇画はもちろんのこと、肖像も多く手掛けその数も200点を下らない。
この作品は、初期の彼の典型的な画風。髪の揺らめくさま、みずみずしい肌、衣装の入念な筆致、画面左からあたっている光を上手に取り入れて輝いている人物が描かれ、おそらくモデルの写実性を損なわない範囲での美化を試みている。

  • AP172

1515-20年 フローラ/Flora(ウフィッツイ) Oil on canvas

フローラは、ギリシャ神話で多産の女神。モデルの持つ花束などから、結婚の愛を示すテーマといわれる。女性の官能性を比較的抑えた上品な表現である。モデルは不明だが、依頼者の関係者か作者の想像上の産物かもしれない。

  • AP173

1515年頃 ルクレチアとその夫/Lucrecia and her Husband(ウイーン)

ルクレチアは、ローマ王政最後の王の息子にレイプされ、その旨夫に告白し復讐を頼んで自殺した。古来から貞淑な女性の鏡とされているが、彼女が持つ美しさと貞淑性の双方の表現が要求される。ティツアーノは、双方の要素を繊細な筆致で両立させた。モデルは不詳。

  • AP174

1515年頃 鏡を見る女の肖像/Woman with a Mirror(ルーブル) Oil on canvas

この作品のモデルは知られていないが、一見して(173)の作品のモデルに顔立ちや雰囲気が類似している。作者は鏡を巧妙に使い、モデルの背後も見えるように三次元的工夫している。その当時、絵画と彫刻のいずれが優位か熱い議論があったが、二次元の絵画が三次元を表現できることで絵画の優位性を誇示する意図があったかもしれない。

  • AP175

1520年頃 黒の衣装の若い女性像/Young Woman in a black Dress(ウイーン)

髪の描写を見るといかにもティツアーノの作品と思われるが、彩色を抑えて華やかさに劣るこの絵の真贋に疑問を呈する意見もある。依頼に基づく特定のモデルの肖像であることは明確である。

  • AP176

1534/36年 イザベラ・デステの肖像/Isabella d’Este(ウイーン)

イザベラは、マントヴァ公の妻として、息子の摂政として、当時のイタリア政界において国際的な活躍をして藝術を庇護した著名な女性。この絵は、当時60歳代のイザベラの注文でいったん描いたものを依頼者本人が気に入らなかったため、若い16歳当時の彼女を想定して描いたもの。

  • AP177

1535年頃 毛皮の少女/Girl in a Fur(ウイーン)

ウルヴィーノ公の依頼で描いたもの。色彩を控えめにしてシックに仕上げている。ポーズの大胆さよりも、表情の愛らしさが印象に残る。

  • AP178

1536年 美しき人/Portrait of a Lady”La Bella”(ピッティ) Oil on canvas

豪華な衣装に身を包んだこの女性は、貴婦人の威厳をもつ。モデルを知らない人にも説得力ある美人像を造っている。(AP178)のモデルとほとんど見分けがつかないほど似ていて、おそらくウルビーノ公の身近にいた同一モデルであろう。

  • AP179

1537年 エレオノーラ・ゴンザガの肖像/Portrait of Eleonora Gonzaga,Duchess of Urbino(ウフィッツイ)

エレオノーラはイザベラ・デステの娘で、ウルビーノ公に嫁いだが、芸術の庇護に熱心だった。この作品は、モデルの年齢(44歳?)相応に描いたもの。背景の半分を壁で仕切り、残り半分に遠景を描くこの絵の構図は、ジョヴァンニ・ベリーニ(AP39)、デユーラー(AP118)の構図を借用していることが分かる。

  • AP180

1538年 ウルビーノのヴィーナス/Venus,Known as the “Venus of Urbino”(ウフィッツイ) Oil on canvas

ウルビーノ公の注文で描かれたこの等身大の作品の照射するパワーは、裸体画としてはゴヤの「裸のマヤ」と双璧である。ティツアーノが手伝ったとされるジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」とは異なり、裸体自体を完結的に追求したような現実感があり、古代ギリシャのヴィーナスに範をとった大胆なポーズで官能性も高い。婚礼の儀式に出かける前の花嫁が、召使からこれから着ていく洋服の用意をしてもらっているという場面で、女性が裸でいることの必然性の説明を絵自体でしている。裸でいることへのなにやら弁解がましくも思えるが、わざわざこうした点の配慮をするところがティツアーノの社会的成功につながっているのかもしれない(ちなみに、マネのオランピアにはこれがなかった,というより逆に挑発した。)。この絵画の成功が後輩の若手に与えた勇気は大変なものがあったはずで、16世紀に裸体画が増える一因になっていると推測する。

  • AP181

1542年 聖カタリアに扮したキプロス女王/Posthumous portrait of Caterina Cornaro as St.Caterine of Alexandri(ウフィッツイ) Oil on canvas

1510年に逝去しているキプロス女王の肖像である。歴史上の世俗の人を聖人と結び付けて描くことで女王の正統性のメッセージを発信している。

  • AP182

1555年 鏡のヴィーナス/Venus with a Mirror(ワシントン) Oil on canvas

60歳台半ばを過ぎた時点で、そうであるからこそというべきか、このようなみずみずしい裸体画を描いたことにまず驚く。神話は裸体画を描く口実に都合のよいものであるが、テーマの設定と場面の具体的構図には所定の決まりがない分、画家の実力が発揮される。鏡を縦横に使い、キューピッドを動かすことで、全体として動きとリズムが出た。モデルは、(AP182)と類似しており、(AP184)もそうであるが、その当時の画家の好みのモデルがいたのであろう。ヴィーナスが裸に豪華な毛皮をまとっており、毛皮の赤の色使いが白い肌を浮き立たせ、全体として鑑賞用の美人裸体画として非常に魅力的なものになっている。

  • AP183

1555年 女性の肖像/Portrait of a Lady(ワシントン) Oil on canvas

(AP183)の作品とモデルが共通である。イスラム風の衣装に身をまとっているが、初期のころと異なり全体にモノトーンに仕上げている。

  • AP184

1560年 ヴィーナスとアドニス/Venus and Adonis(ワシントン) Oil on canvas

ヴィーナスに愛されても、これに耽溺しないで彼女を袖にする男アドニスは頼もしい。彼を必死で抱きとめようとするヴィーナスが後ろ姿で、新鮮な構図である。この構図の絵は人気があるので工房で複数描かれ、ヨーロッパ各地に運ばれた。

  • AP185

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